日本睡眠環境学会学術大会に参加!(オンライン開催)

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2022/02/23

2022年2月18日、2月19日と2日間にかけて行われました、日本睡眠環境学会の学術大会に参加しました!
日本睡眠環境学会は、私がもう一つ所属している日本睡眠学会に比べると、睡眠科学や睡眠医学よりも寝装寝具や環境について言及していることが多いです。
登壇される方も違いがありますが、今回の学術大会は個人的にもとても面白かったので、いくつかテーマになったお題と、個人的な見解を少し述べさせていただきます。

中学生への睡眠教育、抑うつとの関連など

中学生への睡眠教育の介入や、中学生の睡眠と抑うつとの関係性など、思春期である中学生を対象とした発表がいくつかありました。

中学生の睡眠に対する意識は課題のひとつと認識していますが、中身を紐解くと中学生には少々難しい内容かとも思うので、まずは睡眠をしっかりと取ること、眠れない場合は誰かに相談すること、この2つを徹底すると良いと思いました。

成人が行なうような睡眠に対する睡眠衛生方法までこの年代からやる必要はないと思いますが、スマホに使用時間や頻度に関しては、親や先生から丁寧な指導が必要だと思います。

この時期から身体的特性に加えて環境面でも夜型化に傾く傾向があります。そのことを理解するのも必要ですが、社会が思春期の学生に合わせるように登下校の時刻を遅らせるというのも選択肢のひとつです。

2019年にはカリフォルニアでこのように就業時刻を遅らせる取り組みがあったようで、これは参考にすべきだと感じました。

運動とレム睡眠中の夢見について

非日常的な活動および体験が夢見にどう影響するのかについての研究発表がありました。この結果の発表では、レム睡眠の量は増加傾向にあったが、夢の記憶がなく、何らかの影響が夢の記憶を起床時までに消去している可能性があるという感じでした。

旅行にいくと良く眠れることがあると思いますが(逆ももちろんありますが,,,)
非日常的な体験をすると、脳に新たな刺激が加わり、疲労感も併せて加わることで良質な眠りに繋がることがあります。
今回はその新しい刺激がレム睡眠にどう影響するのか、そして夢にどう影響するのかを考察した研究でしたが、被験者が夢を覚えていなかったという結果になってしまいました。

観点はすごい面白いと思いましたが、レム睡眠が増加するとどうなるのか、その割合は総睡眠量と比較してどうなのか、また夢見は様々な研究が行なわれていてかつわからないことが多い中で、どうしたら起床時に夢を記憶していることが多いのかなど、もう少し深く介入したお話を聞いてみたかったです。

カフェイン含有栄養ドリンクと睡眠

今回の学術大会は優秀賞というものがあったみたいで、それに選ばれたのがこのカフェイン含有量についての研究発表でした。具体的には介護現場でのカフェイン含有飲料の摂取が、夜間の睡眠状態にどう影響するのか、日勤・夜勤とシフト別に調査している内容でした。

研究の発端は、介護現場の裏にあるごみ箱がエナジードリンク(カフェイン含有飲料)の空き缶の山だったとか...
介護職は労働時間の長さや勤務内容、シフト制や給与水準なども影響して離職率の高い業種だといわれています。その中で空き缶に着目してカフェイン含有飲料の摂取状況を調査したのはとても意義のあることだと思いました。

日勤者がカフェイン含有飲料の摂取が少ないほど夜間の睡眠で休養が取れているという考察で、今後カフェインの含有量に気を配る必要があるというまとめだったが、カフェインは色んなものに入っている中で、カフェイン含有量の表記+適正摂取量の把握はたしかに必要だと思いました。

日勤者が労働力の影響でエナジードリンクの摂取が多いのかもしれないという考察に関しては、もう少し深堀する必要があると感じていて、そもそもその飲料を好んで飲む理由がなんなのか(眠いからなのか、力が必要だからか、あるいは単においしいからなのか)を明白にすることも検討すべきと感じました。

眠気の評価

これから私が取り組んでいく事業の中では一番親和性があり、この評価はとても重要だと感じています。その中で今回は主観的眠気の指標として用いられるESS(エプワース睡眠問診票)の日本語版JESSの妥当性について検討したという発表でした。

眠気の評価は基本的に主観的な眠気、客観的な眠気の評価、場合によっては間接的な眠気の評価を行ないます。客観的な眠気の評価については脳波を観察することで行ないます(端的にいうと眠ろうとして眠れるかを20分で測定する)。

間接的な眠気の評価は、課題を用いて日中の活動に影響が出ているのかどうかを評価する方法です。

眠気に関しては4つのグループに分けることができ、主観客観ともに眠気が強い人、弱い人、主観的な眠気は強いが客観的な眠気は低い人、客観的な眠気は強いが主観的な眠気は低い人。

最後のパターンは病気の可能性がありますが、この主観と客観にはズレが生じることが多いです。この研究ではJESSの妥当性でしたが、眠気の評価をもっと正確にかつ、どのように行なうのか。今後様々な研究を通して確立していきたいと考えています。

AIがする睡眠の良否判別

題目からすると、機械学習から睡眠を判別するということだったので、非常に懐疑的でしたが、概要はデバイスにより音声記録をして体動や呼吸などの音声を機械学習により分析していくというもので、とても可能性を感じました。音による睡眠の判別は難しいとも思いますが、膨大なデータが取得できれば、雑音やその他の物音は関係なく、体動による音と呼吸だけを抽出することは可能だと思いますし、おそらくスマホで行えるので、加速度センサを用いて睡眠ステージを測定するアプリよりもPSGとの相違はなくなるのではと思いました。

課題でいうと、この研究では睡眠の良否判定を行なうとのことで、その識別は主観的な睡眠満足度から行なわれているとのことでしたので、もうひとつ睡眠そのものの評価制度を高めることも大切なのかと感じました。
しかし、睡眠において定性的な評価もとても大切なので主観は蔑ろにできないと私は思っています。

森林浴と睡眠

個人的に興味が湧いたのはこの森林浴についてです。良質な睡眠には深部体温を上げるために入浴が効果的ということや、ハウスメーカーの宣伝するアレルギー性の少ない木材を使用する寝室で睡眠にプラスの効果があるということは割と良く耳にしますが、森林浴というのは初めて聞きました。感覚で睡眠には良いんだろうなということがわかりますが、運動とレム睡眠の関係でも述べた非日常的な体験も関係あるのかなというように思います。

森林の分野ではあまり睡眠及び疫学的な研究をされる方がいらっしゃらないようなので課題も多いそうですが、その分睡眠に対してプラスな効果があるというエビデンスがこれからどんどんと出てきそうな気もします。

他にも、パンデミック下での睡眠状態、ソーシャルジェットラグについてやアクチグラフについての発表などもあり、とても面白かったのですがその中でも印象深かったものをいくつかピックアップさせていただきました。

なおかつとても主観的な感想がメインで概要があまり明記されていませんので、気になる方がいらっしゃいましたらお尋ねください。(雑ながらもなるべく早く投稿しようと思ったので、余裕があれば都度概要を挟んでいければと思います)

睡眠について、事業だけでなく学術的な面でも、引き続きしっかりと勉強を重ねていきたいと思います!

OfficeS4S 代表
睡眠指導者 松本